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マウリツィオ・マロッタさんを迎えて

「社会協同組合」運動民際 交流フォーラム

 9月3日、イタリアで障がい者を雇用する統合労働協同組合運動を推進し、‘91年に「社会協同組合」の法制化を実現させたマウリツィオ・マロッタ氏を迎え民際交流フォーラムを開催した。 ここでは、フォーラム中から、マロッタ氏の講演を抜粋して紹介する。

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 こんにちは。ここに招いていただいたことを、とても光栄に思います。私が非常に興味をもっておりますのは、社会協同組合が日本でどういう現状にあるのかということを知ることです。

◇私の社会協同組合の経験

 ではまず、私の社会協同組合の経験について、お話ししたいと思っています。

 30年ぐらい前になりますが、障がい者の労働参加を求めて、私たちはある連合会をつくりました。1970年ごろ、マルケという州で、居住型のコミュニティというものを創設しました。この70年というのは、非常に大きな転換の年で、障がい者に対して、一人の市民としての権利を保障することによって、社会参加を実現する、という政策の転換が行なわれた年でもありました。その権利を保障する制度化に関していいますと、障がい者が公立学校に通えるようにしたいとか、あるいは障がい者の自主的あるいは自立的な権利、自立して自主的に生きることができる権利を保障することです。また、当時、多くの障がい者が収容されていた精神病院を閉鎖するという課題も、その権利の向上という政策目的の中に数えることができます。特に、権利問題で重要なことは雇用の問題で、当時のイタリアは、特に中度・重度の障がい者に関して、労働参加が非常に困難な状況にありました。

 そういう中で、私も含めた何人かのイニシアティブによって、若いボランティアの青年、そして障がいを持っている若い青年たちを集めた、ひとつの労働現場を創設したわけです。私たちは、代替的なオルタナティブな工場、あるいは代替的な工場というようにいいまして、障がい者そして健常者の平等をそこで実現をするというモデルをつくり、それによってイニシアティブを発揮したわけです。

 その権利の拡張活動ですが、いわゆる公的な機関によって障がい者自らが表現する能力を妨げられていたという現実があるわけです。ですから、私たちは、健常者と障がい者が一緒になる場を提供することによって、障がい者が自らを表現することができる場を実現したことになります。これが、私たちの一番最初の経験になるわけですが、それがどこからきたかといいますと、イタリアにおける法的な「協同組合」の組織形態がありまして、それに基づいて私たちはこのイニシアティブをとったわけです。イタリアでは、現在20万の協同組合が存在します。イタリア国内において幅広く広がりをもって、経済に大きな影響力をもっている協同組合が存在しているわけです。

 イタリアの憲法では、労働者間の協同を、国家が援助するべきであるということが定められております。1900年代のはじめごろに、農業労働者と土木関係労働者との相互扶助として、協同組合が設立されました。これは単に労働を保護するというだけではなくて、経済的な発展を保証するための手段としても考えられて設立されたわけです。非常に重要なものですが、現在、協同組合全体の中では、私たちの社会協同組合というのは、まだ小さな規模しかもっていないのが現実です。

 この協同組合においては、全国的な規模いくつかの連合体が存在します。それ以外に労働組合、そして経営者団体が存在するわけですが、政府が政策を策定するときには、常にこの三者と協議をして策定作業にかかるかたちで、政府と社会的な団体との協調あるいは協力、協同関係というものが存在しております。

 協同組合という形態ですが、たとえばある企業が経営危機に陥いると、その企業は倒産して労働者が解雇されるわけです。その場合、労働者がその企業の所有権を自らの労働を守るために獲得することができるということが、イタリアでは法律によって定められています。

 私たちの社会協同組合の経験について、お話しを戻したいと思います。70年代、協同組合の中で、障がい者に対して労働機会を与えるということに関して、まだ悲観的な見方がありました。しかし、障がい者が、社会協同組合活動や、そのほかのボランティア、あるいはオペレータと共に参加をしてくるわけです。参加の実績を評価するかたちで制度化が行なわれたわけです。しかし、まだその時点での協同組合の活動というのは、第三者からの注文を受けて作業をしたり、あるいは「孫受け」などで作業に従事するということに限られていました。それらの経験をとおして、実際にそこでボランティア、オペレータ共に、多くの犠牲を払って仕事に従事してきたわけですが、こういう活動を私たちのコイン(CO・IN)と同じように、連合体全体として組織していくという自覚や意識が高まってきたわけです。その実績の高まりによって、いわゆるロビー活動が可能になっていったわけです。どういうことかといいますと、公的な機関との交渉、あるいは公的機関との共同の会議、あるいは集会など、そのような連携での活動を進めることができるようになりました。

◇イタリアにおける社会協同組合の位置づけ

 先ほどお話ししましたように、すでに一般の協同組合を支援する法律は存在しますが、1991年には、特に社会協同組合を援助するための法律381号が、イタリアの議会によって採択されました。それは、いわゆる社会協同組合という組織と事業を、イタリアにおける協同組合全体の中に位置づけ、それを承認する性格と目的をもった法律になっております。

 二つの法律というのは、二つの形態を定めておりまして、ひとつは、組合員がオペレータというかたちでのサービスを提供する社会協同組合になっています。ここでは、医療や教育、そのほかの社会福祉を行なう協同組合になっておりまして、障がい者はそのサービスの提供を受ける利用者というかたちで位置づけられています。

 今、オペレータのお話しをしましたが、70年代にすでにそういう動きというのは現れてきています。といいますのは、その当時まで存在していた古い形式の福祉システムがありました。それは、慈善的な事業としてサービスを提供するということで、公務員がそのオペレータとして従事していたわけです。しかしいま、新しいかたちで登場してきた社会協同組合では、外部の人間が主体となってこのサービスを提供するかたちで活動しています。県や市と契約を結んでサービスを提供するかたちになっています。

 もうひとつの形態の社会協同組合は、労働参加を求める、実現する協同組合になっておりまして、30%が出発点になりますが、30%の障がい者を雇用する目的で成立する社会協同組合になっています。また、法律によって、規制するシステムをつくることが目的にもなっております。それは、協同組合間の競合関係を避けることを目的にして、きちんとした制御をする、システムとしても追求するわけです。主に、この協同組合は、州との関係で行動する関係になっています。

 こういう、規制に関する法律に基づいて、イタリアの労働省がいわゆる監視役として、年にあるいは定期的に、たとえば財政状況の監査で入ってくることになっています。そういうかたちをとるのは、協同組合間の非現実的な競合関係を排除することもありますが、いわゆる、にせ協同組合、つまり本来の社会的な目的を必ずしももったものではない協同組合が参入してくるという事態を回避するために必要となっています。

 障がい者の労働参加を促進するためには、二つの方法があります。その一つは、税制上の優遇措置、減免税というか、社会保険料などを無料にする措置をとることが挙げられます。もう一つは、公的な注文を積極的に協同組合が受注をする措置がとられています。

 つまり、福祉領域において協同組合は、非常に大きな位置を守ってきているわけです。それは、社会経済の発展にとっても重要な意味をもっています。この11年、12年の間にその結果として、5000の新たな協同組合が設立されてきております。協同組合では、約20万人ほどが就業しておりまして、そのうちの2200が、障がい者の労働参加に関わる協同組合になっています。残りは医療関係とか、社会福祉関係の協同組合です。

 社会協同組合には、2万2000人ほどが就業していますが、ここでは当然、障がい者やハンディキャップをもった人たちが就業しているわけです。彼らの中には、一般にいわれている障がい者だけではなく、薬物依存症の患者もいますし、また、ひとつの病気として正式に認定されず、仮に一時的であったとしても、精神的に動揺している、あるいは障がいを一時的に受けている、そういう人たちも含めた精神障害者も入っていますし、あるいはアルコール依存症者も入っています。あとは、刑務所に収監されている限定的な囚人たち、つまり社会労働参加が困難なハンディキャップをもっている人たちも含まれています。

 このタイプの協同組合は、非常に発展してきています。先ほども触れましたが、当初は第三者からの注文を受けるかたちで、非常に支払いも悪かったわけですが、その発展の結果として、いまは協同組合自身が直接に事業に従事をするようになっています。ですから、マネージャーとしてのマネジメント、あるいは経営能力というものが高まってきていると言えるかと思います。実際に、そういう協同組合の発展の中で、現在は都市整備や緑地整備、廃棄物の収集、あるいはインフォメーション、コミュニケーション、清掃一般、そういう領域において、事業活動を展開しています。

 私の「カーポダルコ」という協同組合についてお話しすると、公企業に対してインフォメーションサービスを提供しておりますが、600人以上の従業員がここで仕事に従事しています。そこでの事業高が850万ユーロになっております。「コイン(CO・IN)全体としますと、2500万ユーロの事業高ということになっています。

 また、私の関わっている「コイン」ですが、これは50の社会協同組合を組織しています。「コイン」自体がそれだけの規模をもっているということですから、全国規模でどの程度の影響力をもった事業体であるかが、ある程度わかっていただけるだろうと思います。それが、経済的な発展に大きな力を与えているといえるかと思います。

◇日本の社会協同組合を考える

 日本とイタリアとの比較についても、若干お話ししておきたいと思います。日本においては、恒常的な困難さというものがあるのではないかと思います。社会協同組合のための法制度が、十分整備されていないのではないかという感じを受けております。それに対して、私たちが共通に感じていることは、たとえば、社会経済が必要であることであったり、あるいは生活の質を高めることであったり、あるいは環境問題、エコロジー問題に対する強い関心であったり、あるいは男女の不平等が存在していることに対して、共通の感じ方とをもっているのではないかと思います。

 権利の防衛という課題に関していいますと、社会的な企業あるいは社会事業という形態のもとでも、その権利の保護ができるのではないかと考えています。たとえば、労働組合などが存在しますが、時代の変化が要求されているものに対して、労働組合の対応は十分ではないのではと思っています。したがって、代替的な経済システム、オルタナティブな経済システムをつくっていく必要があると考えるわけです。

 市場の利潤に基づいた、営利に基づいたかたちでの、それだけを優先するような場で仕事をするのではなくて、たとえば有機農業などにもみられる、もっと別なかたちで仕事を求める人たちに働く場を提供することが重要ではないだろうかと考えます。社会の変化に対応していくための社会的な活動が必要になってくるのではないかと思います。ですから、人間のもっている問題点を考えたり、あるいは人間とその活動との関係を考慮した企業、あるいは協同組合が必要です。それが、経済的な発展にも結びついていきますし、社会企業ということができるだろうと思います。

 最後になりますが、こういう社会的企業は、いろいろな国で、さまざまに行なわれていると思いますが、その社会的企業を創造していくことによって、人々の権利であったり、経済であったり、あるいは人間関係の価値を高めていく、評価していく、それが可能になるのではないかと思います。どうもありがとうございました。(拍手)


 <文責編集部>