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「新春対談」 神奈川に市民の自治体政府をつくる

土屋侯保さん(大和市市長)&又木京子(神奈川ネットワーク運動・県会議員)


 市民の力を信頼し、パブリックインボルブメントで「市民活動推進条例」、「自治基本条例」などの構想を展開している大和市の土屋侯保(つちやきみやす)市長と、厚木市で参加型福祉の市民事業を実践している又木京子(またききょうこ)県議の対談です。今春行われる統一地方選挙を前にお二人の「参加型政治」に寄せる思いをお聞きしました(司会は当研究所主任研究員奥津茂樹です)。

<司会> 参加型システムの基礎として、市民の力を信頼するというテーマがあるわけですが、日経での市民参加度が2位になった大和市の土屋市長と、厚木でいろいろな市民事業をやっている又木さんにおいでいただきました。いずれの市民事業も、市民への信頼、市民の力を信頼しているからできるのであって、そのへんでお二人の接点があるのかなと考えています。

 はじめに土屋さんから市民の力を信頼していく、その市政の思いからまずお話いただきたいと思います。

<土屋> 私は市会議員を2期8年しましたから、大和市民は議論してわかるところはわかってもらえる市民だと信頼しています。私はこれを「民度」と言っています。人格とか教養、これらを含めた広い意味で、大和市民は「民度」が高いですね。市長になって一番感激したのは、中学校の統廃合の提案をしたときに、反対が澎湃(ほうはい)と沸き起こって、何千という署名があり、中には市長リコールの声もでました。そのときに私は、「ではみんなで考えましょう。みんなで決めてください」と言ったんです。結果的に小学校が一校、1年生から6年生まで1学年1クラスしかない学校になってしまいましたが、その小学校のところに中学校をつくろうという具体的な提案が市民の側から出てきたんです。 

 そんな具体例でもわかるように、大和の市民は、反対のための反対運動ではなくて、提案もしていくし、自分たちも動く。だから理念条例である「みんなのまちづくり条例」とか、「環境を守り育てる基本条例」も、市民は何だかわからないとか、つまらないものということにならない。市民参加でパブリックインボルブメントして、名称もこだわって「みんなのまちづくり条例」と親しみやすくしました。

 100%市民でつくってもらったのが、「新しい公共を創造する市民活動推進条例」です。これは、行政は全然タッチしていません。最後は市長提案ですから、「支援条例」の方がいいんじゃないかと推進条例をつくる会に言ったら、私の意見も軽く却下されました。市民参加とか住民自治はどこの首長も言いますが、私は実行性という点ではほかには負けないと自負しています。いま、「自治基本条例」をつくるために、「つくる会」という会を市民35人でつくってもらっています。その中で、住民投票を常設型にし、あるテーマについて住民に意思を問うたり、判断を仰ぐ機会をもうけるつもりです。大和の場合、基地問題がありますから、そういうテーマを住民投票にかけるとか…。 

 直接民主主義でやると議会軽視にならないか、と言われますが、議会は市民の代表であると同時に、市民の一人でもあるわけですから、一緒に参加すればいい。そんな総合的なところが、日経ランキングの市民参加度になったと思います。1位も目前かなと思います。(笑い)

<又木> いま、とても面白い時代に入ったと感じました。神奈川に暮らしていますと、県が市民の生活を動かすというのは大変難しいと思います。私も前から、市町村が光っていかないと本当の政治は変わらないと思っていました。大事なのは、市民の参加力もしくは責任の持ち方で、それを競うとしたら大変面白い町になると思います。市町村の政治が競っていったら、日本はあっという間に変われるという気がいたしました。国会議員の方も自分でもおっしゃるけれど、国が社会を引っ張っていけなくなったということです。それは当たり前のことで、いまのような条例がどんどん出てきて、なおかつ議会が独自の条例案を提案したり、市民が直接請求していったりという参加力が重なって推進していったら、大変いい日本の政治の基礎ができると思いました。私は16年間、議員をやってきましたが、市民の側から市民の力を信頼して町への参加力を上げるということを、この間繰り返してきました。例えば、ケア付きの外出支援サービス(移動サービス)は、9年前につくりました。県や国から白タクだと注意を受けましたが、5〜6年経って県内に広がり、いま全国に広がり、タクシー会社にも広がって、福祉タクシーをも引っぱってきた。企業も巻き込んで福祉政策テーマに対する市民の参加力を上げたと思っています。いま国が“福祉白タク”を制度化しようと言ってきている。市民事業が制度をも引っぱってきているというか、そんなNPOづくりを多様にしてきました。 

 それから「WEショップ」という、リユース・リサイクル品の売り上げを海外支援に活用しようというNGOですが、厚木で1号店をつくりました。それから4年半で県内に48店舗になっています。

<土屋> 大和にもありますね。

<又木> 厚木が初めでしたが、とにかく「大丈夫、市民はちゃんと理解してくれるよ」と楽観しながらリスクを負ってチャレンジしてみることが大事だと思います。いまは当たり前のように、あちこちでデイサービスをやっていますが、私は10年前に市民でデイサービスセンターをつくることをやりました。いま介護保険になってNPOでデイサービスができるようになりましたが、最初に始めるのはリスクがあるんです。お金のリスクもあるし、ちゃんと経営が成り立つだろうかとか。でも、私は楽天的で、まあ大丈夫だろうと…。 

 ただ私の場合は、市民社会のベースのところに女性が担っている多様なアンペイドワークと連携できる部分があります。ワークを少数者でまるごと背負ったら苦しくなる。だから、そういう参加システムがあったらいいな、市民事業に活用できたらいいなと思うわけです。私が使いたい市民力はみんなも使いたいはずだと、プラス思考で考え、実践してきました。 

 日本では役所に参加することを「市民参加」だとずっと言い続けてきましたよね。だけど、本当は自分のまちに必要なシステムは自分たちでつくっていくんだという考え方が大事でしょう。 そういう意味では、土屋さんが市長のポジションから日本一の参加力のあるまちをつくろうとする。私は在野にいて、直接的な、実践的なまちづくりのテーマが実はできていると思っています。それがたくさん県内に発信されて、全国に発信されているということが、いまとても楽しいのです。

<土屋> 次の知事というのは「最後の知事」だと思います。横浜の中田市長とこの間3時間ぐらい、さしで話しましたが、それがキーワードだねと…。誰か口説くときにはそうしようという話になった。

<又木> そうですね、「最後の知事」にしたいですね。

<土屋> 都道府県のあり方は、1期でも2期でも、それが最後になるぐらい…。

<又木> 解散することができる人が知事をやった方がいいですね。

<土屋> 神奈川県にとって、まさに7都県市サミットというのがあるわけで、それにさいたま市が入って8都県市になる。このブロックを石原さんがいいか悪いかはともかくとして、ここも一つの文化圏、千葉、埼玉、神奈川、東京と。ここで「最後の知事」を実現したい。

 私も厚木市はよく知っていますから、自民党が県議選で3議席取るところで、又木さんがよく県会議員に当選したなと思っていました。でも今お話を聞くと、厚木で実践をされてきたことが大きな基礎になっていますね。その元は「自分がこういうヒューマンサポートがあればいいなと思うことだ」と聞き、なるほどと思いました。

 私が8年前、市長になったとき以来、市長執務室に毎朝入る度に、俺が21万の市民の市長をやっていいのかなと思いながら部屋に入るわけです。そのときに、椅子に座って思うのは、私のような普通の人間がやっている方が市民の感覚がわかるだろう、その実態に合った行政ができるだろうと。ですから、私発でこういうサービスがあればいいな、これはいらないなという視点が、これからは一番必要だと思います。それが乖離しているところに、いろいろな問題が起きているわけです。 

<又木> そうですね。私は先日、三重県知事の北川さんに会い、いろいろお話させていただきましたが、やはりトップの持っている権力の怖さというのを、いつも感じているとおっしゃっていました。あの方は2期8年になりますが、これからも現場からまちを変えていく、政治を変えていくんだと…。その時に、最も必要なのは市民の力だと言っていました。

 北川さんが今回2期で下りてしまうのは、黙っていても当選してしまうぐらいだから、市民は、この知事でいいのだろうかとか、この政策でいいのだろうかと考えたことにならない。それでは自治力が落ちてしまうんだと…。

<土屋> 耳が痛いな(笑い)。私は次の対立候補の名前が出ていないので困っています。自治力が落ちちゃう。

<又木> そうです。市民の民度が落ちるとおっしゃった。新人を立てて、真剣に選挙をやって、市民に「これでいいですか」と尋ねることで市民は選ぶんだとおっしゃっていました。こういう政治を日本中で広げてみたいなと思います。

<土屋> 市長もやりたいし市会議員だってやりたいんですよ。私だったら、というのがあるでしょう。(笑い)

<又木> 議員で条例提案したらどうですか(笑い)。

<土屋> 私は知事も、国会議員もやりたい。自分で「あれしたい」というテーマがたくさんありますから。

<又木> 本当のトップの仕事は市民の力を信頼して高めていくことだと思います。それが新しい21世紀型の自治といわれ、分権といわれることだと、私はお二人の話を聞いてそんな思いを強くしました。やっぱり日本は、この方向で絶対進むべきだなと思いました。

<土屋> 先日ニューヨークのジュリアーニ市政についての講演をしました。土地の所有者、建物の所有者とか、住んでいる人、仕事をしている人がみんなお金を出し合ってNPOに頼んで、警備会社とか清掃とかやるわけです。

 アメリカは、生活保護みたいな制度がないので、ホームレスには宿舎をあたえるのではなくて、仕事を与える。ビラを剥がすのでも、捨て看板を撤去する仕事でもいい。そういうところのニーズに対してNPOがどんどん委託を受け、それがスモールガバメントになる。民の役割を増大するには、われわれが、あるいは本当は市民の方から「われわれがやる」というようにならなきゃいけない。

<又木> そうですね。

<土屋> 福祉政策というのは、ばら撒きの要素が多分にあるが、そうじゃない喜びというのも必ずあるはずです。汗を流す喜びとか寄付をする喜びとか。土地とかお金を寄付する人は、それでも十分に社会参加なんです。

<又木> 私も、本厚木の駅前の150坪の土地を寄付していただいたことがありますが、それで福祉活動を始めました。個人の方が私個人に寄付をくださったんですが、私は受け取れませんから、社会福祉法人を立ち上げました。「女性が働き続ける」ことが条件の土地でしたので、「高齢者の施設でいい」とおっしゃって、じゃあ高齢者がデイサービスに来るだけではなくて、そこで働く女性たちが働きやすいようにということで、ワーカーズ・コレクティブにしました。みんなが自分の都合に合わせて時間を組み合わせて働いています。

 だから私にとって、福祉活動テーマは、もう一つは働く場づくりです。福祉をサービスの提供だけと考えてしまうのではなく、ニーズの発信者に関わることによって働く場をつくるんだと私は考えて、システムをつくってきています。利用される方も、意欲を持って次のステップにつながればいいですし、働く人のいろいろな働き方が可能になる。ぜひ、市民がいろいろなレベルで社会を担う場をつくっていきたいですね。

<司会> 今日のキーワードは、市民の力を徹底的に信頼していくということですが、市民と共に、どんな大和市をつくるのか、また又木さんは、どんな厚木のまちをつくりたいのでしょうか、お話ください。

<又木> 課題は「安全」です。生活の安全の基本は、年金や医療保険とか社会保障があります。そういう基礎の安全性とともに、このまちは安全だ、安心だったというまちを私はつくっていきたいと思います。基本的には福祉だけではなくて、身近に働く場があることであったり、子育てする仕組みだったり、最近は子どもを産むことであったり、そういった生活をたすけあい・支え合える仕組みがこのまちにあるといいなと、そんな政治をしていきたいと思います。

<土屋> 私は、大和がたとえ変わったとしても、日本全国が変わらなければ、あるいは国が変わらなければ、単に変な市、変な市長で終わってしまいますから、みんなが普通に参加力を発揮してもらいたいという希望があります。 

 また大和は地方交付税・交付団体ですが、交付税目当てみたいな政治意識を変えなければいけない。それと、自主財源を確保することとかを、特例市での活動を通して日本全国に広げていこうと思います。

 それから、基地問題がありますから、「外交は国の仕事」ではなくて、われわれが動かすことができる。あれは国の仕事、あれはほかの市とか県の仕事と押し付けるのではなくて、みんな自分に関わることなんだという参加と責任の伴った意識を持ってもらう。そういうまちにしていきたいなと思います。