昨年、社会福祉に関係する法律は「社会福祉事業法」が「社会福祉法」となり、全国の自治体が「地域福祉計画」をつくることになりました。それぞれ各自治体は準備を始めておりますが、地域福祉計画という名前でありながら、地域ではなく「行政」福祉計画になりかねないということで私たちは、「地域市民福祉計画」をつくろうというプロジェクトを立ち上げました。
この地域福祉計画の「地域」というときのエリアはどうなっているのかという問題が一つあります。法律では基礎自治体です。人口350万の横浜も3300人の清川村も1個の地域福祉計画ということです。それが本当に地域福祉なんだろうかという見直しから始めております。
私たちにとってもう一つ疑問だったのは、地域福祉なんていう問題をトータルに捉えられる人がいるんだろうかということでした。
そこで、一つは生活のエリアにこだわって計画をつくってみること、もう一つはいろいろなグループ、個人、ネットワークをする人たちそれぞれが、自分たちの地域福祉計画をつくってそれを合わせてみたら自分の町の福祉計画だねというのが一番ではないかと、このマニュアル策定を終っております。例えば、W.Coとか生協活動を通じた福祉計画をつくれるでしょうし、商店連合会の人もお買い物に来た人の顔を見ながら地域福祉計画をつくる。それから、もちろん企業も、行政職員も、プロの福祉を担っている人たち、もしくは民間で福祉を担っている人たちにもつくれるでしょうし、自治会、町内会、子ども会、いろいろなレベルで地域福祉計画がつくれるというのが、私たちの策定の基本になっております。
そこで、地域福祉市民計画をつくる基本は何かといったら、発見なんです。「ここの家、子どもだけで買い物に来るようになったよ、それって何かあるんじゃないの」という発見。いま私たちは、いろいろな人間としての能力がすごく衰えてきていて、発見能力もなくなっていますが、もう一度、身の回り、自分の周囲、いろいろな人との関係をよく見て、発見する力をつけよう。
そして、発見の後は相談です。しかしコミュニケーションがなければ相談ができません。ですから、相談しやすい環境をつくる。
相談を受けたら、今度は支援できるサービスをコーディネートする。いろいろな人たちのグループや個人のネットワークがないと、いろいろな相談があってもそれをつなぐことができません。
そして、その後にサービス提供です。ここからがまた大変で、私たちの能力ではサービス提供できない、ネットワークでできないと思ったら、そこで次のサービスをつくり出していく(創出)、ここまでをやっていくと、地域福祉というのは本当に豊かになると思います。
さて、そこで少し厚木の事例をお話しをさせていただきたいと思います。
厚木では1982年に生活クラブが生れて、私もすぐに加入をしております。私が最初に手がけた大きなものは、障害者の方からの相談でした。私が、その人の課題を発見したきっかけはこうでした。生活クラブで石けんをつくっていたので、ある作業所が石けんつくりを教えてくれといってきた。そこで石けんつくりに行った。向こうがこっちを発見したんです。「又木さんは主婦たちのネットワークがあるから、私が地域で暮らしていくサポートをしてくれるボランティアを探してください」と言われたのです。そこで「生活クラブの組合員になってください。そうしたら、ボランティアを組織化しなくても、おそらく班の人は日常の班の助け合いの中であなたを支援してくれますよ」 そして、その人を中心に班をつくりました。そうすると牛乳は自然に冷蔵庫に届けてくれる、洗濯物が干してあれば入れてくれる。そのうち、「ちょっと買い物行ってあげようか」と声が掛かってくるということで、これが私にとってはサービス提供で、創出したのは生活クラブの班の力なんです。これも実は、地域福祉市民計画なんです。ですから、生活クラブの班は、地域福祉の溜まり場です。コモンズやアソシエーションは地域福祉の生活拠点です。
都市では人間のたすけあいが失われていくということがわかっていて、生活クラブや福祉クラブをつくってきました。ワーカーズもネットもつくってきました。しかし、そういうものが手にない都市もいっぱいあるわけで、そうしたところの地域福祉市民計画づくりはものすごく困難だと思っています。自分が自分のニーズに努力をして、地域をつくろうとするものにしか、これからは地域福祉計画ができないんです。
さて、地域福祉計画というからには地域で、せいぜい自治体単位で考えましょう。ところが、私たちのおたがいさまの福祉サービスでいくと、生活クラブの班という小さな隣り近所が単位であったりするわけですから、やはり地域福祉単位というのは、そんなに大きなものではないんです。そこで、一番小さな単位として1000戸の団地とか2000戸の団地などが一つのコミュニティとして、発見・相談・サービスコーディネート・提供・創出、こうした機能が動いたら、これは立派な地域福祉になるなと思います。
今日もこの前のNETの「1000人集会」で伊藤保子さんが子どもミニデイサービスが神奈川に18できたというけれど、これぐらいのものは一つのまちに18あってもいいなと思いました。ですから今つくっているのは全部モデルです。団地ごとにあって、子育て支援の必要な子どもたち、もしくは大人の集まり場になればいい。そして、ここでは資格要件だけが厳しかったり、建物の設備が厳しいのではなく、私は人間がいるということが大事だと思っています。そこに、先ほどの発見能力がある。子どもたちを見ながら、虐待も子育て放棄も、子どもたちのいろいろな病気もたくさん発見できます。
今、私が欲しいなと思っているのは、「子ども未来じゅく」です。これは小中学生の居場所です。自転車でちょっと通える範囲に欲しいなと思っています。今、すごく青少年犯罪が多くて、ひったくりの9割、おやじ狩りの8割は青少年です。青少年といっても中学生です。この年代の犯罪が非常に増えていて、その温床になっているのがカラオケボックスとゲームセンターです。ただおしゃべりしたいだけとか、集まっていたいだけなんだけど、集う場所がない。ですから、「行き場所」が必要です。おしゃべりしててもかまわない塾。この塾はいろいろな機能を持っていますが、ただ何かないといけないから学童保育と名乗ってみたり、勉強塾と名乗ってみたり。大人がいて、子どもたちがワイワイと寄れるようなきっかけがあれば、大人と子どもの会話も出てくるんじゃないかと思っております。
それから、「WEショップ」は、いまアジアの女性の自立支援のためのNGOですが、ヨーロッパへ行くと、NPOの活動をする人たちの多くがリサイクルショップをもっていて、そこを自分たちの拠点として、いろいろなものを持ち込んで売って活動資金にしている。同時に自分たちの社会を循環型に変えながら活動している。すると補助金をくれと言わなくてもすむし、リサイクル品を持ち込んだり買ったりという人間のネットワークができ、ニーズへの発見もあるのではないかと思っています。
今日は、先ほどのNETの発表で地域通貨も聞いたので、これも大事だなと思っていますが、これぐらいのものがコミュニティにあると、結構「地域福祉市民計画」の発見からサービス創出までの流れが生まれてくるのではないかなと思っております。(拍手)
いま福祉事業連合の組織展開方針は、ニーズを発信する側の主体性をもう少し浮き立たせようという狙いで、これまで神奈川を5つにわけてきた介護保険対応のマネージメントユニットを、15に分節化する計画です。
この15のローカルユニットには福祉ワーカーズがまだ少ないところもありますが、ニーズを発信する側の組合員はどこにもいます。ですから、まず組合員が頑張ってワーカーズをつくるなり、自分たちのニーズを発信する主体者として、地域福祉計画を生活者の立場からつくっていければすごいかなと思います。ニーズ発信者とサービスの提供者側が、同じ生活者として参加型福祉をつくっていくというのが市民福祉の方向性です。これができるのは生活クラブ運動グループの参加型システムが下敷きにあるからです。
共同購入という経済行為をベースにした「たすけあい」、その延長線上に家事・介護ワーカーズをつくってきました。その流れから、厚木の他、いくつもの地域でモデルが出てきています。それを自然発生性に任せないで、目的意識的に、ネットワーク化してつくっていこうというのがこのプログラムです。
15に分節したうちの一つのユニットである鎌倉では、福祉クラブ生協が、消費材の宅配をする世話焼きワーカーズから始め、組合員が家事サービスをつくり、その中で、食事づくりが多かったために、食事サービスをつくりました。それから、通院したり、出かけるときには、家事・介護のサービスが車を出していましたが、車を使うことに伴う危険への保障が家事・介護サービスでは困難がだったため、移動サービスをつくった、というように順次生活支援サービスを広げてきました。一方、鎌倉は人口が16万ですが、20歳以下の人は2万人ぐらいで、若い人が子どもを連れて住みたいと思えない状況があるようです。そこで子育てしやすい状況をつくろうと、ネットを中心として子育てのワーカーズができました。
別の市民福祉事業だとなかなかうまくリンクできないということがありますが、今回「ローカルユニット」を組んで、いろいろな業種のワーカーズが一つのテーブルをもった。そこに生活クラブと福祉クラブの二つの生協も参加し、ネットもオブザーバー参加する。こうしたことで連携がとりやすくなってきました。
厚木では、家事介護から始まり、土地の寄付をいただいたことがきっかけでデイサービスの「ケアセンターあさひ」設立、その活動から入所型の施設も必要という発見があり、サービスハウス「ポポロ」の設立となりました。同時に、家事・介護サービスが子どもへの対応も非常に多く、「くれよん」設立、そうすると今度は学童の問い合わせが増え、学童保育を行なうワーカーズ二つがほぼ同時に設立されました。現在は「子ども未来じゅく」を考えています。 また、家事・介護ワーカーズは厚木市内に一つじゃなくていいと、違う地域にもたすけあいワーカーズが設立されました。
地域福祉ネットワークの形成は、当初高齢者福祉を担うワーカーズ連絡会として出発しましたが、その後設立された保育の「くれよん」という異業種が入った結果、市民がつくる参加型福祉のシステムづくりをメインテーマにしていこうと、連絡会は発展的に解消し、厚木生活クラブ地域福祉協議会が設立されました。
今後、ローカルユニットづくりでは、まずは情報を交換し合うところから、それを各団体に持ち帰って、共有化しながら進めていく新しい組織づくりが、「非営利・協同」の市民福祉にとってすごく大きなテーマなのかなと思っています。
利用者で、障害はもっているけれど頭のクリアな方から、痴呆の方と一緒のデイサービスではすごく辛いという訴えがありました。痴呆の方と頭のクリアな方を分けているデイサービスが藤沢には1カ所しかなく、順番待ちで、なかなか利用できない。そこで、足りないなら私たちがつくろうと話し合いました。
ちょうどそのころ、私たちがケアプランを立てている利用者の奥様の方がお亡くなりになり、お父さまは息子さん方に同居することになりました。残ったお宅を空けておくのはもったいないと声をかけてみましたら、「どうぞ」と、息子さんが応えてくれて、いよいよミニデイサービス「藤の花」を進めていくことになりました。
試算したところ、だいたい2300万円ぐらいかかりそうです。私たちのW.Co藤は、定例会に参加することが入会の条件で、定例会では理念を共有し合い、自分たちは何ものなんだということをいつも話し合ってやってきたものですから、びっくりするほどみんなからスイスイお金が出てきました。70名弱が全員自己申告して、今もう少しで2400万円になります。自分たちのお金を使って、自分たちで必要なものを地域につくり出す、そういう思いで「藤の花」をつくり出しているところです。
私たちは、各々の人たちを大事にするミニデイサービスを目指して調査してきましたが、昨年、ネット会員の一人から、2000万の寄付をいただき、それでもう一度仕切り直しをして、デイサービスだけではなく、プラスお年寄りの住む場所を立ち上げようということになりました。
かつて、生活クラブ運動グループのオルタナティブツアーに参加し、フランスで、カントウという痴呆の方もそうじゃない方も共同生活していて、住んでいる人と家族が自主管理している施設を見ました。それを、私たちの町につくりたいと、進めています。
現在の構想は、下に9の居室、上にデイサービスで、建設費を試算したら、なんと1億円です。お金がかかり過ぎて事業が成り立たないんじゃないか。資金の問題も含めて課題になってきました。また、貸りられる物件が今まで活動していたエリアから外れていて、その地域のニーズが具体的につかめていない。さらに、こういう新しい施設で、ワーカーズ・コレクティブの働き方はどうあればいいのか。さまざまな課題が出ています。
しかし、自分たちの老後の安心を築くには、自分たちが英知とお金と時間を出してやっていかなければならないだろうと、希望をもって出発点に立ったところです。
横浜のデイサービスは、利用者のニーズに本当に応えたものになっていないのではないかという認識がありました。そこで、自分たちの家事・介護の中から見えてくるニーズに合ったデイサービスを自分たちでつくっていこうと、このプロジェクトを立ち上げました。そして、1年間の活動から、金沢区で「デイサービスセンターNOAH」、青葉区で「デイサービスやまびこ」と、二つの実践モデルをつくりました。地域福祉市民計画は足元からなんだということと併せて、施設づくりのところでも、主体的なリーダーシップをとっていくことが「非営利・協同」にとって非常に大事なことだと思います。